■■■ 研修会のお知らせ ■■■

11/2開催 やまゆり研修会での質問と回答


11月2日(木)にやまゆり主催の研修会『知的障害のある人が地域で安心して暮らしていくために~住まいの切り口から~』を開催いたしました。研修会の終了後、参加者より頂きました質問の回答を又村あおい氏より頂きましたので公開させて頂きます。

【質問1】(住まいについて)
32才のB2の息子は、A型作業所で働き、家賃5万6千円(なんとか生活できています)の家賃を払っててワンルームに住んでいます。本人のストレスが高まると、独り言が大きくなり隣りの人からクレームがきます。鉄骨のマンションですが、防音の点では、鉄筋コンクリートのもう少し広い間取りに住んだらどうだろう?と親としては考えています。そのような物件は家賃が高くなので、市営、県営の住宅を申し込もうかな?と考えますが、公営住宅はゴミ出し、そうじetcルールが細かく人間関係、宗教の勧誘eeいろいろ大変そうだと想像します。いっその事、親が2万程援助して「UR公団」の団地も考えています。いろいろと悩みがつきません。アドバイスお願いします。

【回答1】住宅の選択は個人差もあり安易にお返事はできませんが、ご質問のケースでは継続A型を利用されているようですので、「自分の収入で生活を維持できるか」という視点が優先されるかと思います。近隣住民とのトラブルに関しては、ゼロに越したことはありませんが、障害の有無に関係なくトラブルは起こりうるものです。また、騒音系の苦情は、仮に住む場所を変えたとしても、声の大きさによってはクレームになってしまいます。その意味で、障害の特性によって頻繁に騒音トラブルが起きるようであれば、たとえばホームヘルパーや自立生活援助といった、本人が障害ゆえに抱えやすいストレスや困りごとを聞いてくれてストレスが軽減する方向を検討されても良いかと思います。

【質問2】(住まいのサービスについて)
重度知的で強度行動障害があります。グループホームでは他の利用者の器物破損が心配です。入所施設は親がいる間(生存している)は定員枠がないと自治体の障害福祉課で言われています。それほど入所枠は見込めないのでしょうか。

【回答2】結論としては、国として入所施設の新規整備を推奨していない現状ですので、入所枠は基本的にありません。非常に直截な表現になってしまいますが、現に入所している人が退所しない限り、空きが出ないということです。また、そのような状況で十分な定員の空きがある入所施設があるとすれば、その理由は推して知るべし・・といえるでしょう。研修会の中でも触れましたが、一般的に行動障害が顕著な人の場合、一緒にいる人との相性や他人の行動でパニック等が引き起こされてしまうリスクがあることから、その意味で大人数の入所施設が住まいの場所として最適解とは言いにくい面もあります。比較的少人数で他者刺激を軽減できるグループホームや、重度訪問介護を活用した一人暮らしといった選択肢も相談支援事業所へ提案してみてはいかがでしょうか。

【質問3】(地域生活支援について)
移動支援は48Hヘルパーさん利用してます。
重度訪門介護を認めるのは、役所が決定するのですか(色々な日があるので)

【回答3】移動支援、重度訪問介護ともに、決定するのは市区町村となります。移動支援は外出時の付添い専門のサービスですが、重度訪問介護は自宅にヘルパーが訪問するホームヘルパー(身体介護・家事援助)の要素と外出時の付添いを兼ね合わせていますので、より幅広く利用することができます。ただし、サービス名称からも分かるとおり、重度障害の人(具体的には、寝たきりに近い人や、行動障害が重度の人など)でないと対象となりません。

【質問4】(地域生活支援について)
行動援護がうけられない(人がいない。きてもらっても本人と合わない)ので、本人は外出ができず困っています(海老名市)

【回答4】行動援護のヘルパーが少ないのは、全国的にも課題になっています。
背景には、行動援護のヘルパー要件が厳しい割に、要件が比較的緩い移動支援と報酬の差が少ない点が指摘されています。そのため、令和6年4月からの報酬改定において、特に利用の多い短時間の利用については行動援護の報酬を引き上げる方向が検討されています。

【質問5】(住まいに関する制度について)
グループホームのサテライトは3年期限ですが無期限にしない方が良いのでしょうか。障がいのある人によっては、完全な独り暮らしではなく、常に見守りがあり安心でき環境としてサテライトはとても良いと思いますが、いかがでしょうか。

【回答5】サテライト型の利用期限がおおむね3年となっている背景には「グループホームを出て一人(または二人以上)で暮らしたい」という希望を実現する仕組みである点があります。常に見守りがある環境での暮らしについては、たとえば自立生活援助や地域定着支援、あるいはヘルパーサービスなどを活用して「地域での独立生活を見守る」という方向性でサービスが整備されています。

【質問6】(住まいのサービスについて)
気のあった人同士でシェアハウスに住むようにするととても良いと思います。そのようなシャアハウスをグループホームとして認めて欲しいと思いますが、いかがでしょうか。

【回答6】シェアハウスは気の合う仲間と共同賃貸して1人当たりの家賃を軽減する効果が期待されますが、これを「グループホーム」として位置付けると消防法などの規制対象となります。シェアハウスをグループホームとして位置付けるとすれば、その前にグループホームへの規制を適正化することが必要となります。

【質問7】(地域生活支援について)
直接的な地域生活支援ではないですが、福祉事業所が積極的に地域の人たちの中に入っていき、地域の人(お年寄りから子供まで)と自然な交流をすることで、自然に障害への理解が深まります。それは、地域の人たち自身にとっても、安らぎと心の成長を助けることになります。福祉職員の人材不足にも役立つと思いますが、いかがでしょうか。

【回答7】障害福祉サービス事業所が地域との交流を積極的に行うことは、共生社会の構築に資するものです。また、事業所を「地域に開く」ことで、外の目が入り、たとえば虐待防止の効果も期待されます。一方で、事業所を利用する障害のある人がすべて地域住民との交流を望んでいるわけではありませんから、いわゆる「施設のお祭り」へ利用者を含めて全員参加しなければならない・・といった運用にすることは避けたいところです。理想的には、利用しているご本人が関心を持った地域活動への参加を事業所側が後押しすることで地域との交流が進むことを期待したいと思います。

【質問8】(その他)
発達障害などで、人と関わることが苦手な人でも、孤独が良いのでしょうか?人は誰でも「孤独」を望んでいるのではないように思います。「マズローの欲求5段階説」では、第3段階に「所属と愛の欲求」があります。その人が安心できる支援を工夫し積み上げることで、「所属と愛の欲求」を満たせるようになることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

【回答8】マズローの5段階説は有名ですが、万人に必ず当てはまるものではありません。質問7にも通じますが、基本は本人がどのような人との関わりを希望するかであり、援助者サイドとしては可能な限りその希望に沿ったサポートのあり方を考えることが重要ではないかと思います。もちろん、体験・経験が十分とはいえない知的・発達障害のある人の場合、周囲からの提案なども考えられますが、それらはあくまで「提案」であり、決めつけてしまうことは避けたいものです。支援者や家族、行政や相談員のみならず、本人を含めた関係者間で、体験・経験の先に本人の意思決定があり、決めた意思の実現をできるかぎりで支援する、そのためには「選択肢」をできるだけ増やしていく・・という構図が共有できれば素晴らしいことだと思います。

2023/12/01更新 a:128 t:1 y:1